- 作者: サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,内藤濯
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/03/10
- メディア: ハードカバー
- 購入: 19人 クリック: 501回
- この商品を含むブログ (313件) を見る
当時まだピカピカのランドマークタワーの有隣堂でフェアを開催していて、そこで買った記憶があります。
読み返してみました。
語り継がれるだけある。
これを読んで「わかるわかる!」と思ってもらえる人に出会えるかな。
おとなの人たちに<桃色のレンガでできていて,窓にジュラニュウムの鉢がおいてあって,屋根の上にハトのいる,きれいな家を見たよ……>といったところで,どうもピンとこないでしょう。おとなたちには<十万フランの家を見た>といわなくてはいけないのです。すると,おとなたちは,とんきょうな声をだして,<なんてりっぱな家だろう>というのです。
子どもは,おとなの人を,うんと大目に見てやらなくてはいけないのです。
だけれど,ぼくたちには,ものそのもの,ことそのことが,たいせつですから,もちろん,番号なんか,どうでもいいのです。
「うそだよ,そんなこと!花はよわいんだ。むじゃきなんだ。できるだけ心配のないようにしてるんだ。トゲをじぶんたちの,おそろしい武器だと思ってるんだ」
王さまは,どんなこともじぶんの手のうちにありそうに,いばった顔をしていました。
「ぼく,感心するよ」と,王子さまは心もち肩をそびやかしながらいいました。「でも,人に感心されることが,なんで,そうおもしろいの?」
「なぜ,酒なんかのむの?」と,王子さまはたずねました。
「忘れたいからさ」と,呑み助は答えました。
「忘れるって,なにをさ?」と,王子さまは気のどくになりだして,ききました。
「はずかしいのを忘れるんだよ」と,飲み助は伏し目にあってうちあけました。
「はずかしいって,なにが?」と,王子さまは,あいての気もちをひきたてるつもりになって,ききました。
「酒のむのが,はずかしいんだよ」というなり,呑み助は,だまりこくってしまいました。
「そういった王子さまは,たいへんさびしい気もちになりました。考えると,遠くに残してきた花は,じぶんのような花は,世界のどこにもない,といったものでした。それだのに,どうでしょう。見ると,たった一つの庭に,そっくりそのままの花が,五千ほどもあるのです。」
「ぼくは,この世に,たった一つという,めずらしい花を持ってるつもりだった。ところが,じつは,あたりまえのバラの花を,一つ持ってるきりだった。」
「あのキツネは,はじめ,十万ものキツネとおんなじだった。だけど,いまじゃ,もう,ぼくの友だちになってるんだから,この世に一ぴきしかいないキツネなんだよ」
点燈夫のくだりが、谷川俊太郎の「朝のリレー」みたいで一番好き。