「季節は、
はにかみながら
やってくる」
人は欲張りな生き物である。
楽しいことがあれば、それを毎日でもやりたくなる。おいしいものがあれば、季節を飛びこえて食べたくなる。豊かに、便利になったこの国では、それをいつでもかなえられるようになったかわりに、季節の訪れを、まだかまだかと待ち焦がれて手に入れていた、あの圧倒的な昇揚と歓喜を失ってしまった。
人間が望んでやってきたことだから、誰にも文句は言えない。しかし、僕がいまふと渇望するのは、あの初々しい「小学一年生のような季節の訪れ」との再会である。