Bi-Bo-6

Bi-Bo-6

日常のあれこれ

「となりの谷川俊太郎」- 谷川俊太郎

miraipub.jp

 

心臓

それは小さなポンプにすぎないのだが

未来へと絶え間なく時を刻み始めた

それはワルツでもボレロでもなかったが

一拍ごとに私の喜びへと近づいてくる

 

 

会う

始まりは一冊の絵本とぼやけた写真

やがてある日ふたつの大きな目と

そっけないこんにちは

それからのびのびしたペン書きの文字

私は少しずつあなたに会っていった

あなたの手に触れる前に

魂に触れた

 

 

拒む

山は/詩歌を/拒まない

雲も/水も/星々も

拒むのは/いつも/ヒト

恐怖で/憎しみで/饒舌で

 

 

影と海

私がだれかを傷つけるとき

苦しむのはこの私

あなたが誰かを苦しめるとき

傷つくのはそのあなた

 

苦しみも傷もついてくる

影のようにどこまでも

 

私がだれかを喜ばすとき

幸せなのはこの私

あなたがだれかを幸せにするとき

喜ぶのはそのあなた

 

幸せと喜びは歌っている

海のようにいつまでも

 

 

自分をはぐくむ

悪いこころと善いこころ

悪いことと善いことと

ふたつはからみあっている

木に巻きついた蔓のように

 

自分をはぐくむのは難しい

自分を枯らすのは簡単だ

 

あなたを導くのは

ほかでもないあなた自身

あなたはあなた自身を超えていく

自分を発見し続けることで

 

自分を大切に見つめたい

今日も明日(あす)もいつまでも