Bi-Bo-6

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記憶を記録 feat. 宇田川藍

スラムドッグ$ミリオネア - ダニー・ボイル監督

"Slumdog Millionaire"

スラムドッグ$ミリオネア[Blu-ray]

スラムドッグ$ミリオネア[Blu-ray]


2008年/イギリス/英語・ヒンドゥー


この作品こそが映画の醍醐味、に感じました。
オモテとウラ(社会)、過去と現在、男と女…
あらゆる対比が美しく混ざり合うマーブル。
ヒンドゥー語と英語、インド文化と西洋文化も忘れずに。


受賞遍歴を見ればすぐわかりますが、ほとんどが英米の映画祭のもの。
この作品が「どういったもので、誰に受けるのか」を端的に表していると思う。


個人的には、デートムービーという感じがした。当たり障りもなく、非常に綿密に詰まっているので日本人好みだと思う。
インド周辺の地理や文化に興味がある友達同士で観ても、盛り上がるかも。


★---

センスを感じるのは、カメラワークと要所要所のセリフ運び。
とくに最初の、ムンバイのスラムでの活劇は私たちに「生の実感」「死の恐怖」「インド」を伝えてくれる。
ここからは「この映画ただものじゃないぞ」と、一気に物語の中へ引き込まれる。空撮・遠景が素晴らしい。



ネタバレあり


特筆すべきは彼らの「生きるちから」。
そのほとんどが「盗み」だったりするのだけど、それは生きるための最低限でしかなくて「悪さをしよう」というものではないんだよね。大学の国際社会論や、サンデルブームのなかでよく取り上げられていたような問題。個人の「生」はいわゆる「基本的人権」によって尊重されているわけだから最優先にしたいところだけど、すべての人間がそこを基準に行動していたとしたらこの世界の秩序はどこにあるのだろうか?日本人の面白いところは、「秩序」という言葉の生まれる(西洋から伝わる)前から「和を以て貴しとなす」という言葉によって、「"みんな"が生きていくためには何が必要なのか」という部分への答えを出していた点。人が生きていくためには「我慢が必要なんだ」という教えが1000年以上前から根付いていたところに、「人生はもっと輝かしいものであるべき」という「ドリーム」な思想が持ち込まれて、もちろんそっちを説いて生きていく方が気持ちいいからそんな社会になりつつある。西洋化っていうのは語呂がよいから(目指すべきものは西洋にある!というわかりやすい指針)。自ら「二番手」を望んで掴みにいくのはある意味日本人の性なのかも。きらいじゃないです。
そういえば動物のなかでの「自己実現」ってなんなんだろうか。…シンバみたいな、王様になること?

お兄ちゃんが力強いからこそ、前半の「生」が叶う一方で、裏の社会に転がっていってしまう様子になんとも胸が痛む。彼のラストシーンが一番好きかも知れない。ねえ、自分があの立場になったとき、あんな風にお金に包まれて…死ぬかな?そういえばお兄ちゃんは、物語の中盤からしてどんどんどんどんうさんくさい見た目になっていくのが表現の妙だなと思った。


謎解きの部分は以前観た「ユージュアル・サスペクツ」的だけど、心地良くまとまっていく感じがある。
個人的に好きなシーンはタージマハールで観光客との駆け引き。(観光案内したり、靴盗んで売ったり。「American Brand」)
ラティーカかわいい……!


兄と弟、どちらにも言えるのが、「Strong」ってことなのかな*



以下は気に入ったレビューの引用。

ブームが過ぎてから、と思っていたら、メインの俳優がストリートキッズになっていた
とかのニュースで話題が再加熱し、随分遅く見ることになってしまった。


 世界中でブームを巻き起こしたクイズ番組、「クイズ・ミリオネア」。
インドのテレビ局で、18歳の少年が前人未到の最高金額を手にしようとしている。
しかしあと一問を翌日に控え、少年は不正を疑われ逮捕されてしまう。
少年は何故学者をも上回る知識を備えていたのか。
収録が始まる夜までに、彼は無実を証明できるのか…


 とにかく映像が素晴らしいと思う。
小さな、本当に小さな家々が集まって出来た巨大スラムの空撮、
荒野を疾走する列車の屋根に立つ二人の少年、
蜃気楼のように聳え立つタージ・マハールイスラム風の天蓋、
踊る少女の腕にヘンナで描かれた複雑な模様。


 「駆け抜けた人生の途中にヒントがあった」というような予告コピーがあったが、
少年が取調官に語る半生は余りにも過酷で、宗教対立で母を亡くし孤児になってからの彼は、
平和に暮らす者には知り得ない事を知り、また逆に、富める者にとっての常識を知らない。
祖国の高額紙幣に描かれた肖像画は見たことが無くとも、観光客が恵んだドル札は覚えている。


 観光案内タクシーのタイヤを盗まれた八つ当たりに、子供の主人公を平気で殴る運転手の前で、
観光客に「本当のインドが知りたいんですよね?これがインドです!」と叫ぶシーンがあるが、
その時の観光客が「本物のアメリカも見せてあげる」と主人公に金を恵む。
これは勿論根本的解決ではなく、拝金的な資本主義国の傲慢さを顕していたと思う。


 そして、主人公がひたすらに初恋の少女を探し続けるひたむきさが泣かせる。
それ故に対立した兄が、裏社会に身を落としてゆく。
ただ横暴で放埓な兄のキャラクターが前半で強いからこそ、その生き様が終盤に生きてくる。


 しかしキスシーンで終わる映画なんて久しぶりに見た気がする。
すぐ浮かんだ映画ではトム・クルーズの『トップガン』位だ。
エンディングでは突如インド映画お決まりの群舞が始まり、
北野武監督の『座頭市』かよ!と突っ込んでしまった。


 最近読んだ記事によると、子供の眼を潰して物乞いをさせるマフィアは実在し、
しかも、赤ん坊を攫ってきては物乞いに一日いくらで貸し出すシステムまであるそうだ。
マフィアの支配下にあるなら、収入は全て上納させられ、保障されるのは僅かな食料と寝床のみ。
それでも子供達は、仲良くするなら、自分達を蔑む(カースト制の影響もあるのか)街の人々より、
マフィアを選ぶと言う。「誰だって無視されるより、相手をしてくれる人がいいに決まってる」
その文の横に添えられた写真の、子供達の瞳に見据えられ、胸が痛んだ。
  ――成り上がり話ではなく、兄弟の対比ストーリーとしても興味深い