Bi-Bo-6

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記憶を記録 feat. 宇田川藍

ようこそ、アムステルダム国立美術館へ - ウケ・ホーヘンダイク監督

"HET NIEUWE RIJKSMUSEUM"
2008年/オランダ


http://www.rijksmuseum.nl/
アムステルダム国立美術館


美術館のバックステージツアー!


★----
もともとこの映画が公開されると知ってからは絶対観に行こうと思っていました。
美術館改装工事の裏側が見れるというフレコミだったのですごく興味を持っていた。


この映画の評価はバラバラです。
映画としてのオチがちょっとあれなので(あとで触れたい)たしかに評価が低いのは納得。


だけどまた、そこに確かに存在する「プロジェクト滞りの様子」がすごくリアルだった。
そんな簡単には最善策出てこないよ、と。
だから、たくさんの人々の動きと、時の流れをを捉えたドキュメンタリーとしてはすごく濃厚で
私はこの部分に期待をしていたので、終わり方にとくに文句はないし、
むしろこのてんやわんや騒ぎの後に開館するアムステルダム国立美術館がどうなるのか、とっても楽しみになる映画。
そういうことで自分の中での評価はすごく高い。
「ミュージアムの魅せ方」という切り口ではすごく斬新だし、賞をいくつかとっているのにもうなずける。


改装前は分野別だった展示を、改装後は「時」を軸のラインに練りなおすそう。
そこで18世紀・19世紀・20世紀それぞれの区画を仕切るリーダー学芸員の方々が
それぞれの立場から展示室のストーリー作りに関して言及するわけだけど、とにかく学芸員のみんなの目がきらっきらしていた!!
彼らから、誇りとやりがいをすごく感じた。
とくに金剛力士像を日本から取り寄せてくる一幕における、アジア館の責任者の方!そしてたまたまとは言え日本の美術がとりあげてもらえたことがすごく嬉しい。ありがとうございます。


そしてその「やりがい」はなにも学芸員に限った話ではなくて
警備員のお兄さんだったり、サイクリスト協会の人だったり、西区の委員会だったり…
みんなにはそれぞれの立場があって、それぞれの信念に基づく立ち振る舞い。


みんな、「自分の立場では、これが正しい」を持ち出してくるのだけどなかなか良い案にまとまらない。
このあたりはインターンでもかなり悩んだプロジェクトワークの難しいところ、というかキモだと思うので、プロジェクトの規模はもちろんちがうけど、勝手に共感していた。


結局研究センターの建築計画は二転三転し、
ロナルド館長は計画のさなか(一応の区切りはついたものの)で美術館を去ってウィーンに引っ越すことに。ここで終焉。
なんだかなーという終わり方なのは否めない、というか
2005年に閉館して2007年には修工する予定だったのが4年半以上も伸びて伸びて
遅延に継ぐ遅延なわけだから、もう各員モチベーションの低下が半端ない。
みんな口を揃えて「やる気なくなってきた」という感じ。そりゃそーだ。


「彼は威圧的だわ。」「美術館側は権威を振りかざしていた。委員会を見下していた。」
なんていう、それぞれの立場にいた人たちの本音が面白かった。
コンペで評価された解決策が却下された建築家の怒り、サイクリスト協会の運動について…。
そういう確執はどこの世界に行ってもあるのだなあと。
幸い自分はそういう確執に巻き込まれずに生きてきたけれど、
社会に出て互いの利益がむき出しになったとき、衝突はさけられないのかもしれないな、と感じた。
「妥協」や「折中」をどうやってつけていけばいいのだろうか。


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学芸員や修復係のお仕事についても非常に興味深い。
たくさんある収蔵品の中からどの作品をピックアップしてストーリーを組み立てていくのか
その絵画はどういったジャンルに指定されるのか(絵画の技法と時代との関連性)
物理的な大きさと配置の限界。
有名な絵画を置くか、無名だけどこだわりの絵画を置くか。
数人で倉庫を回りながら話し合っているシーンがお気に入りです。


あとは修復しているところ!ニスを塗ったり削ったり。
粉塵マスクを使っていたり…
大きな絵画ってダイナミックだけどじつは細かい塗布の重なりで
ミクロに見つめるとすごく繊細に描かれていたり(瞳を見るとすごい!!)。


アジア館の責任者の人が発泡スチロールでミニチュア模型をつくっていたのも印象的。
箱庭、好きなんですよ。


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建築家の意見、というところでは
来場者の目線をどう動かしていくか
(中庭からさし込む光につつまれながら、トンネルを抜けると一瞬景色が遮断されるが、中庭に出たときとてもドラマチックな感動を得られる)
あと研究センターの階数とか高さとかデザインとか。


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サイクリスト協会はじめ、オランダということで
建築計画のあちこちに「市民の意見」が重要視されているのもおもしろい。
まあ意見交換会みたいなものを見ていると、日本とさほど変わらないなあという印象。(基本的に住民と平行線)
それでも会議は議題を変え何回も行われていたし、通路の実地調査が行われたり、「意見を交える」という姿勢は強く感じられた。
自転車が通れる通路の話が一番最初の検討課題としてとりあげられていたんだけど、
「市民の足を止めてまで通路を狭くする必要はあるのか」
「美術館は全世界に向けているのだ、デザインにはこだわりたい」…双方の意見も食い違っていたり。


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館長さんそれはどーなの。「俺は理想を叶えるだけ」と言っているけどあなたそれでいいんですか、
ラストに近づくに連れそんな雰囲気がただようフィルムです。


事実は小説より奇なり、といいますが
この映画はそういう意味で現実世界の複雑さというか、
たくさんの人の思惑がうごめくとこうなるよ、っていう、決して怪しい方向ではないにしても
なかなかみんなが納得する案にはならないねという結論。


個人的には学芸員のお仕事が垣間見れたのがすごく良かった。それに尽きます。*