Bi-Bo-6

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日常のあれこれ

HB Vol.6 2009,winter 「2009年、東京。」

http://hb-books.com/index.html

『不思議、TOKYO』1985年 アドリアン・ビューラー・坂詰
「東京を訪れる者は、暗視すると同時に失望もする。安心感をおぼえるのは、ここに西洋と変わらない社会コードを発見するからだ。逆に失望感をおぼえるのは、感じで書かれた看板意以外にヨーロッパ人の描くエキゾチズムを見出すことができないからだ。……東京を日本の首都として地理的にとらえるのではなく、この大都市特有の生活の営み、風俗、といった面からアプローチするのである。東京は超モダンではあるが、決して合理的な都市とはいえない。だからこそ、神奈川・埼玉・千葉を含めた東西百五十キロメートル人口三千万のこの大首都圏が魅力にみちているのだろう。」

『東京情報コレクション』1986年 陣内秀信
「東京を訪れた外国人を二つに分類する。一つは、アメリカナイズドされてしまった日本の都市空間を嘆く人。一つは、伝統的なコンテクストと現代の最先端のユニークな組み合わせに感激する人。」
『東京の空間人類学』

東京の空間人類学 (ちくま学芸文庫)

東京の空間人類学 (ちくま学芸文庫)

「東京の町歩きには、常に意外性が待ち受けている。そしてこれらの景観的要素は、どれも考えてみれば、都市のそれぞれの場所と結びついた立派な歴史的な要素なのである。ニューヨークのような古い建物はなくとも、場所そのものが歴史のなかで培われた独特の雰囲気をかもし出しているのが東京と言えるのではあるまいか。」

『TOKYO STYLE』1993年 都築響一

TOKYO STYLE (ちくま文庫)

TOKYO STYLE (ちくま文庫)

「マスコミが垂れ流す美しき日本空間のイメージで、なにも知らない外国人を騙すのはもうやめにしよう。僕らが実際に住み、生活する本当の「トウキョウ・スタイル」とはこんなものだと見せたくて、僕はこの本を作った。狭いと憐れむのもいい、乱雑だと哂うのもいい。だけどこれが現実だ。」

『東京らしさ、日本の伝統』 山本星
「そもそもちょっと玄人受けする音楽を聴いて・服を着て・ミニシアター系の映画なんか見てみたって、別に自分の価値が上がるわけじゃあない。自分で何かしているわけでもない。ただ東京って場所にいろんなものがたくさんあるから、そこからちょっとセンスのいいものを選んで手にして身にまとうだけで自分が何者かになれたような気になれるだけなんだ。そしてまた、東京で生まれる新しいものはすぐに古くなり、次の新しいものもまたどんどん古くなっていく。」「たかが、一か月や二ヶ月日本を離れている間にも、日本、特に東京はどんどん姿を変えていってしまう。日本に返ってきたらすっかり浦島太郎状態。だからその間にあったという一過性の流行なんかを知ることにはまったく意味がないように思えるようになり、僕は新しいものを追いかける連鎖から解放されたのだった。」「歩く文化」

『東京シンプル・ミニマムライフ、あるいは箱庭的世界』 N村トド子
「小・中・高と、田舎でつつましく優等生的な生活をまっとうしたからか、何をするにも小銭がこぼれていくような、でも何かをしないともったいないような気になる自分にとっては雑音だらけの東京生活が、結局のところしっくりこなくて落ち着かない気持ちが続き、会社員になったころから、どこか遠いところへ行きたいだとか、とりあえず引越ししたいとか、そんなことばかり考えていた。一度すべてをリセットして『クウネル』とか『暮しの手帖』とかそんなテンションで心静かに身の丈にあった生活をしたいなんてことをぼうっと空想していた。」
「完璧な休日。
 市川で静かに暮らしているからこそ、銀座が晴れやかな街だからこそ「おでかけ」が「おでかけ」として完結して輝いて見える。日常生活の雑音はこの際きっぱり川の向こうの市川に置いてきて。お財布と携帯とリップクリームだけバッグにつめて。これも私にとっては―シンプル・ミニマムライフ―もしくは―箱庭的世界―だ、なんて自己満足。でも、結構、心静かに落ち着けるのは本当。昔、吉祥寺や新宿を日常の続きでふらふらしていたときとは心持ちが全然違う。」

『東京駅十四番〜十九番ホーム』 鈴木某
「私は知識によって東京を捉え、作り上げたイメージの東京を自分の都合の良いように受容していただけであることを。それは東京を消費しているだけのことだった。
 そこに愛は無かった。いや、愛があると信じ込もうとしていた。直感的に気づいていた意識を今まで葬り去っていたような感覚も覚えた。東京とはこうである、と定義した時、私は東京を見失った。それは東京について何も知らないと宣言しているようなものだ。こんなに長い時間がかかった自分が笑えた。そして情けなく悲しかった。」「やっと紅茶に手をつけ、訪問のための訪問を繰り返した自分を思った。それは個性的な場所を知っている、持っているという事が自己を補完するという、自らに対する宗教だった。
 それらの行いは私にどこまで訪れた場所の本質をつかませたのだろうか。
 私はどれだけ東京のうわべをなぞったのだろうか。」

『祝祭移動日』ヘミングウェイ
「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる」

「街の磁場」


リリー・フランキー
「東京の中のしょうもない勝ち負けとかな価値観を争ってるのは、結局外から来たやつなんだよね。」「田舎の人間は、実家に帰れば価値観をリセットさせられるじゃないですか、田舎の素朴な価値観と東京の価値観のなかで、整合性がつかないままでいる。」「たとえば、もし自分にできる事が増えたとしたら、良い事も悪い事も前よりわかるようになるじゃないですか。それをせめて自分の好きな人に教えてあげたいと思う。でも、相手はそう思ってないだなって気づくときがある。」