Bi-Bo-6

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日常のあれこれ

☆昆虫という世界 - 日高敏隆

「コオロギの雄は、セレナード、ラブ・コール、ライバル・ソングという、少なくとも三つのパターンの「歌」を歌う。美しくかなでられるセレナードに魅せられて、いよいよ雌が近くへやってくると、歌はラブ・コールに変わる。雌でなく雄が近づいてかたら、激しいライバル・ソングで追い払う。」
「場合によると、攻撃の衝動と逃避の衝動が伯仲してしまうときがある。そうなると動物は、もはや攻撃行動もとれなければ、逃避もできない。このようなとき、はたから見ると動物はたとえば毛を逆立ててじっと動かず(むしろ動けずというべきだろう)、まるで怒りに燃えたぎっているように見えるのである。
昆虫の場合にも、これとほとんど変わるところはない。本当にやる気ならかみつけばよい。本当に恐いなら、さっさと羽を広げて逃げればよい。どちらもできずにいるから「怒って」いるのだろう。もちろん虫は、決断力のないわが身を腹立たしく思っているのではない。それしか出来ぬ姿勢を取り続けているだけで、それが怒っているように、我々の目にうつるだけである。」

「神経系の単純な動きで生じた無意識の行動は、現実には意識的にとられたのと同じ効果を持つ。」