- 作者: 鈴木孝夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1990/01/22
- メディア: 新書
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「明治以来の仮名文字論、ローマ字論、そして特に戦後の漢字廃止論者たちに共通してみられた誤りは、文字が読めさえすれば、ことばの理解は自動的に生まれると安易に考えていたことであろう。従って習得に時間のかかる漢字を多用するよりは、アルファベットや仮名のような、全数の非常に少ない表音文字が望ましい、と主張したのである。
しかし現にアルファベット二十六文字だけを使用している、従って一般の人が読めない語などあるはずもない英語において、語の綴りが一文字ずつ読めることと、その語が理解できることとの間には、大きな隔たりのあることなど、誰も取り上げなかったのである。」
「現在、日本人がよく使うカタカナ英語の大部分が、元の英語の意味通りではなく、日本的に「歪め」られて用いられているということがよく問題になるが、これは見当違いの批判である。なぜかというと、例えば日本人が使う「ニーズ」は、英語の needs の訳としてではなく、むしろ需要、要求、希望といった漢字語の総括的代用品として使われていると考えるべきなのである。だからこそ、本当の英語には有り得ない意味や使い方が、カナ書き英語には見られるのである。」
漢字(語)は口に苦い良薬だが、カタカナ外来語は甘い口当たりの良い糖衣に包まれた毒薬