Bi-Bo-6

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日常のあれこれ

プラチナデータ - 大友啓史監督

"プラチナデータ"
2013年/日本/日本語

プラチナデータ (幻冬舎文庫)

プラチナデータ (幻冬舎文庫)


東野圭吾原作。原作未読。
近未来を舞台にしたサスペンス・アクション。

品川駅前とか上野のコリアンタウンでの街頭アクションが見応えあります。

他に特徴的なのは、「長回し」。役者さんたちの呼吸を感じ取れたのが良かった。
(フレームインのタイミングだったり画角なんかでは演者がアイディアを出すことも多かったらしい)


タイトルバックの、「国民のDNAを集めて、整理して、解析してまーす」という映像がとてもかっこよかった。
よくよく調べると、製紙工場の中に実際にDNA鑑定用の機材を積んで稼働させながら撮影したとか。
やはりリアルの上に立つリアリティに偽りなしといったところ。
ここの部分は監督も話していたように、
見ている人たちがすんなりと「自分ゴトのように」物語へ入り込むためのブリッジという役割を見事に果たしていたように感じます。



トーリーはツッコミどころ、多いかもね。
倫理観への理知的な問いよりも、情緒的な切り口から考えさせようとする内容だと思う。
DNAや優生学という題材を扱いつつも、わりと大衆向けに「ねぇねぇこれってヒドくなーい?」という投げかけ。


保奈美さんの「ワルママ」っぷりは、観終わった後からじわりじわりと来ます。
優しく、理想主義的であり、母性によって暴走してしまう女性…という人物には近年あまり出会ったことがなくとても新鮮でした。


二宮さんの演技が繊細だという評判も多いのだけど、それ以外にも
テンポとか間の取り方にどこか声優的な要素を感じる。(そういえば『鉄コン』をやってた記憶)
神楽とリュウがグラデーション状に共存している姿や、水原希子さんとの空気感も安定しています。
いっちゃん最初の「鑑定結果お披露目会」のセリフがもっとちゃきちゃきしていたらいいなーなんて思いつつ
それでも、本当に、本当に素敵なお芝居だったと思う。


豊川さんはすごくワイルドで、「動ける刑事」の様相を呈していた。
一見するとITに疎そうな古風な風貌なんだけど、捜査の過程では彼もタブレットを使っていたのが印象的だった。
浅間と神楽/リュウの演技は、すごく演者さん同士がなついているんだろうなあっていうくらい、仲の良さを感じる空気感。
前半でさえ、お互いが鼻につく間柄だったけれど結構はやい段階から解けてしまうので、二人並んでると半ば親子みたいになってた気がする。
そういった人物の心境の変化にもあまりエグい描写をしていないことで、ドライなエンタメに仕上がっているようにも思う。
(それを言うと、さっき述べた保奈美さん、水原希子さん、杏さんらの演技には
 女性らしいウェットさがあって、ちょうどバランスが良かったようにも思う)



思い返してちょっとさみしいのは、「印象的なせりふ」が少ないことかな。
そもそもがアクション:サスペンス=6:4、しかも原作モノってこともあるけれど、
「この愛さえも、DNAで決まるのか」といったような煽りコピーがあるのであれば
もうちょっと主人公たちの主張(彼らは上記の問いに対してどう思ってるのか、そうではないのか)をおりまぜてもらいたかった。
その意味では、肝心のメッセージの部分が観賞者にまるなげな感じがします。
とはいえ、監督自ら「日本映画なのでやはりそこは余韻を残した終わり方になるだろう」と話していた通り、
締めきらない、結ばずに幕が降りるラストも本作品のこだわりのひとつなのかもしれない。
(原作は未読ですが、神楽が処罰を受けるシーンもあるそうなので、映画の展開とは違う)


ロケ地、セット、演者のアクション、視覚効果、それぞれに対する非常に細かいこだわりの積み重ねで成り立っていた134分。
「繊細かつ大胆」という言葉を体現した映像作品になっているのではないでしょうか。*