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日常のあれこれ

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか - トニー・シェイ

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか

邦題がださい…


実は電子書籍初体験でした。ダイヤモンド社iPhone,iPadむけに提供しているアプリから。
まずそこの部分でのテクニカルな感想を言うと、意外にも快適で、読みやすい印象です。私はiPhoneから読んでみたんだけど、いままでの本みたいに顔を動かさないし目線の移動距離も短いので、とっても楽。前のページにすぐ戻ることが出来なかったり、全体の章立てを俯瞰して見ることができないのが技術的にもったいないところかな、とも思いますが普通に本を読んでいてわざわざ昔のページに戻ることもないと思うので、全然実用にかなうと思います。文中に貼ってあるリンクなんかですぐURLに飛べるのも便利な仕掛け。こういう堅苦しくない読み捨て型のビジネス書あたりがまさに電子書籍と相性がいい類なのかな。(あるいはその双極にありそうなしかけ満載の絵本とか)

「子どもたちはテレビを見ていましたが、親たちは別の部屋で世間話と自分の子どもの自慢話に花を咲かせていたものです。これはアジア系の文化の一面です。子どもの出来が、多くの親にとって自分自身の成功と社会的地位を示してくれる証であり、子どもは究極の成績表でした。
「自分の運命を自分でコントロールしたかったのです。大事なのはお金ではなく、退屈しないことだったのです。」
「その後の数週間は辛く、どことなく気が滅入るような日々でした。私たちは退屈しのぎと気晴らしにネットサーフィンばかりして過ごすようになりました。サンジェイが日中昼寝のために衣服用クローゼットに入って行くのを見て面白がったのは最初だけ。私たちは少々頭がおかしくなり始めていました。」
「彼は自分と見た目も行動もそっくりな双子の兄弟がいると教えてくれたのです。ふたりがあまりにもそっくりなので、大学時代はお互い相手の仕事の面接に行ったり、ひとりが忙しいともうひとりが相手の代役を果たしていたとのこと。」
「ある日、私は目覚ましのアラームを六回止めて、ようやく目を覚ましました。そして七回目のアラームを止めようとしたところで、突然気づいたのです。最後にこれほど何回もアラームを止めたのは、オラクルに出社するのが嫌で嫌でたまらなかった時でした。同じことがまた起こったのです。ただし今回出社したくないのはリンクエクスチェンジでした。」
「これまでの人生で最高に幸せを感じた時のリストを作ってみてわかったのは、幸せを感じたどの時も、お金を伴ってはいなかったということでした。わかったのは、何かを作っているとか、クリエイティブで独創的でいると私は幸せだったということでした。」
「カジノでは、ハウス相手ではなく、他の客と対戦できるゲームはポーカーだけで、同じテーブルを囲み並の客よりもうまければ、長い目で見れば勝つことができます。」
「1999年はもう二度とこない。どうするつもりだ?」すでに答えはわかっていました。その瞬間、私は自分の気持ちに正直になり、大金に背を向ける道を選んだのです。数日後、私は出社すると、会社に別れを告げるメールを送り、会社を後にしました。自分が何をするつもりなのかまったくわかりませんでしたが、何をしないかはわかっていました。人生や世の中が自分の前をただ通り過ぎるよう無為に過ごすつもりはありませんでした。」
「一度ポーカーの基礎を学んだ私は、カジノで何時間も延々とプレイしても何かを築いているわけではないのに気づきました。私に必要なのはもっとやりがいを感じられることをすることであり、プレイしているゲームはもはや自分には合わないかもしれない、そう思ったのです。ポーカーとの激しいひと夏の恋が終わり、何か新しいことを始める時だと心しました。私にとってテーブルを替えるタイミングでした。」
「みんなが音楽に乗って踊っているというより、音楽がみんなの中をただ通り過ぎていくかのようでした。」
「そういったことにすべて熱心でも、パーティー・プランニングが自分の職業になるとは思えませんでした。職業というよりも情熱を傾けられる趣味として考えていて、終日自分の時間を捧げられるようなもっと意義深いものを探す必要があったのです。」
「ザッポスではさらにもうワン・ステップ必要で、ランダムに表示される社員の写真を見て、ユーザーはその社員の名前を選択肢の中から選ばなければなりません。」
「長くて難しい言葉じゃなくて、「ランチはどうかい?」って風に、短くて簡単な言葉を使ってくれる人と話すほうがずっと楽しいよ。 くまのプーさん

コア・バリュー

1. サービスを通して「ワオ!」という驚きの体験を届ける
2. 変化を受け入れ、変化を推進する
3. 楽しさとちょっと変なものを創造する
4. 冒険好きで、創造的で、オープンマインドであれ
5. 成長と学びを追求する
6. コミュニケーションにより、オープンで誠実な人間関係を築く
7. ポジティブなチームとファミリー精神を築く
8. より少ないものからより多くの成果を
9. 情熱と強い意志を持て
10. 謙虚であれ

本の内容はといえば、「楽しいこといっぱいしてきたら、起業、そしてザッポスにたどりついたよ☆ミャハ」なテンションです。あえてカジュアルな文体であるというのは役者のあとがきにもある通り。「私たちにとって、働くことってなに?」「お金を稼ぐことってなに?」といった少々哲学的なフレーズも見受けられるので、読書のかたちとしては彼に感情移入して成功を追体験する、というものに近い。
後半にいくにつれてやや自己啓発的な文章になっていきます。最後のほうScience of Happinessにくだりなんかちょっと宗教的でもある*1。まあ表現がカジュアルすぎてあまり科学的信ぴょう性を帯びていないというだけで、言ってることはかなり的を射ていると思うので、人にもすすめられる良書です。
「WOWという驚き」「カルチャー・ブック」…などの項目での社員の回想や裏話がとてもユニーク。本書のクライマックス的にも10億ドル突破とかそのあたりだと思うので、読んでいくうちに自分も高揚する感覚がありました。


ドットコム成功者に見るenjoy of lifeという感じです。


##
ちなみに世界の優良かつ有力IT企業になぜ日本発の会社がないんだ?ということが議論されていましたが、
そのなかにあった「起業された国云々よりも、日系人の関わりが全然ないのが問題だよね。」という発言がかなり印象的でした。
AcerASUSで潤う台湾企業、本格的に日本進出を狙うHuaweiもさることながら
Youtube創始者の一人スティーブ・チェンなんかも台湾系だし、今回のトニーも台湾系、、
現役でハーバードに通ってる日本人がいまは数えるほどなんて言われているけど、世界はひろいよねー。

*1:というかもっぱら彼自身も「幸せになれるカルトならいーじゃねーか!」と言っちゃってますが