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日常のあれこれ

大奥 <男女逆転> - 金子文紀監督

大奥 <男女逆転>豪華版DVD 【初回限定生産】

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2010年/日本


最近はこれまでにないほど頭が洋画脳になってるので、久々に邦画を観て感じることも多々あって楽しかったです。
goo映画の48%ってレビューが妥当だと思います。


二宮と阿部サダヲの掛け合いが最高でした。
2人の間(ま)は本当にしっくりくる。心地良い。
強い信頼関係がお辞儀の所作に出てたりとか。


吉宗の柴咲コウも良かったです。
お内証で「信」だと告げるシーンは、初見だとセリフ回しに「ちょっと先走りすぎ?」かなって思ったんだけどよくよく考えれば、それが人生で初めての夜で、自分が「惚れた」相手と一緒に…という話なようなので、むしろ感情的で良いのかなと思います。「私も女だということだ」のひと言が結構好きだったり。ベースライン的な安定感があります。


大倉の「そなたより拙者の方がずっとずっと美しいわ」はまさにJapanese Beautyを体現しているような。
二宮がちゃきちゃきしてて、江戸っ子いいなって思いました。見た目の印象とはちがう、水野というキャラクターの男らしさがたくさん垣間見れたので嬉しかったです。かっこいい。


★---


私は原作を読んでいないけれど、よしながふみさんが描いたこのマンガには「男女逆転」という主題が含まれているそう。もちろんこの映画の見どころはまさに「男性が"女性のように"扱われる世界」でした。原作はジェンダーを取り扱った作品として賞も取っているらしいのですが、今回は映画に限った感想になります、お赦しください。


以下は本作品の批評とは関係のない、ちょっとした想像です。
もし仮に、ああいう世の中になった場合を考えると、おそらく女性は描かれているように「強く気高く」生きていくのだと思います。(それは、私が女性だから直観で感じることなのかも知れません)。男性から求められることを前提としない女性の社会構造では、真の(メスとしての能力ではない、より知的なレイヤーでの)実力主義になるのではないかな、と予測します。女子校のノリです。将軍に恋をしてる女中さんも多かったりして。
一方で男性がどのような社会構造を形成するかという話ですが、おそらくああいう風にはならないと思うんです。なんでかっていったら、女性の場合は上記のように男性に求められること、その局面においてメスらしさを最大限発揮します。ところが男性の場合、目の前に女性がいるかいないかは関係がないんです。男の集団の中にいるだけで、もうオスとしての力比べが始まっているわけだから。剣道だったり碁を打っていたり…常に勝負ごとをしているわけです。「自分たちは鉢の中の金魚だから…」っていう諦めの部分に個人的な違和感というか、「全然男らしくない」みたいなことを考えてしまったのかも。
草食じゃないけどでも両方の性別共に立場が変わったら、適合というか…性質も変化していくのかな。ちょっとだれか反対側になって暮らしてみてほしい。ただ、「なりたくて反対側にいるのか」「そうじゃないのか」は、この男女逆転という設定の中ではすごく重要だと思います。


そしてこの映画のエンタメとしてのもう一つの見どころは、大奥にちりばめられた「ラブシーン的ななにか」でもあると思います。そういうのを匂わせるどのシーンも本当に真剣っていうか、どきどきするより「ぞくっ」てするくらい。役者さんてすごい…。現実離れしたシーンを、現実に起こすマジックにこそ「役柄・演技・俳優のパーソナリティ」が混ぜ合わさっていて、魅力的な立ち振る舞いになるんじゃないかな、と感じました。


まあ客観的にこの映画を見たら各登場人物「あの人がなんで偉くて、この人がなんで偉くなれないかがわからない」状態であることは間違いないし、それを「決まっていることだから」「気品があるから?」という当たり障りの無い模範解答で済ませてしまえる(納得できる)日本人の気質によって作品が成り立っている・この設定を楽しめている部分は大きのではないかと思います。個人主義的な価値観だと、そもそもこんな世の中に生きていくことが「あり得ない」ことだと思えるんじゃないでしょうか。一種のクレイジー。
同じ時代のころ、アメリカでは移民の入植がすすんでいたり、イギリスで名誉革命が起きていたりと…その地球の裏側ではずっとお辞儀して「面をあげよ」とか言っていたんだから…のんびりできる本当に平和な時代だったんだなあとかよく意味のわからないことも感じたり。


+act. (プラスアクト)―visual movie magazine 2010年 11月号 [雑誌]

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ニノのインタビューがすっごくおもしろかった。