Bi-Bo-6

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記憶を記録 feat. 宇田川藍

ビューティフル・マインド - ロン・ハワード監督

"A Beautiful Mind"

ビューティフル・マインド [DVD]

ビューティフル・マインド [DVD]


2001年/アメリカ/英語


2時間15分の間にたくさんの「エッセンス」が散りばめられていて、見終わったあとに脳の左側がくるくると動くような。たくさんの「フック」がある映画。それでいてやさしく・満たされた気持ちにもなれる…不思議なテンションの映画です。


予備知識なしで見たほうが、「映画」としての完成度を味わえると思う。その後はぜひ事後学習を。



ネタバレあり


「数学者を描く」作品であるからには自然と物語自体にも整合性が求められると思うし、その一方できちんとエモーショナルな部分、「私たちは「heart」(心臓・心≠頭脳のみ)」で生きているのだという表現もなされている。そのバランスが非常に心地よいです。


★---


DVDに入っている監督のオーディオコメンタリーを聞くと、カメラワークや科学者をどう表現するか、ナッシュの研究について、ワンカットそれぞれへの監督のこだわりなどについて詳しく聞けて理解が深まるので、本編を観た人にはかなりおすすめです。


妻の一途な愛を描く、という意味ではアメリカ映画の中でも稀有な作品かも。
「神様は画家ね。色彩を創造した」のセリフはどこかでも聞いたことがあります。

例えばこう悟ったとしたら?"自分に大切な人や場所、あるいは思い出が消えたり死んだのではなく実は存在しなかった"

何が真実で、何が"思い込み"なのか。「私たちの見てる世界はすべてが主観で構成されている」と口では簡単に言えても、やはり自分の見ている景色は「本物」なのであると信じ込みたい。例えば数学者は、世界共通の真理を追い求め、実際に解を得ることのできる存在でもあります。「すべて我々に共通する真理の存在」を、私たちは求めてもいます。
カメラワークでは「ナッシュの視界/ナッシュから見える風景」が強調されていて、私たちは知らず知らずのうちにナッシュの心のなかへ入り込んでしまっている感じ。


数学に関して天才的であること・機密業務に関わりはじめたこと・妻の愛・統合失調症・そしてこの作品が実在の数学者の半生に基づいているということ。これらの要素が各々「ビューティフル・マインド」という作品を"刺激"しているように感じました。それぞれのピースは本作になくてはならないもので、その綿密に作りこまれた"作品像"(これは、映像作品そのものとしての小手先に関する評価とはまた違うもの)の完成度が非常に高いのだと思います。


統合失調症の症状については、多少現実離れしている(突然叫ぶとか、「誰かの声が聞こえる」ことは本当かもしれない)ように感じました。エンターテイメント作品である限りはこういう誇張は必要なのかもしれません。
そしてまた、この劇中では「天才」と「crazy」を結びつける決定的なエピソードは入っておらず、物足りない印象です。なぜなら、「天才」と「crazy」が補完関係にあるのかどうか――少なくともこの作品の制作者はどう捉えているのか――を知りたかったからです。人が飛躍的に能力を開花させるとき、そこで同時に「狂ってしまう」ことは、一種の義務なのでしょうか。「狂った」と言われる彼らが見てる世界とはどんな景色なのか…そういうところに興味があったりします。
ただ、作品の構成としては中盤以降の種明かし(序盤では私もチャールズやパーチャーの存在を疑いませんでした。ラッセル・クロウの演技、すごい。)のため、こういうふうに在学中から(物語の初期から)病気が発症していたという設定にしたのかな、と感じます。現実と妄想の境界を徹底的に曖昧に描くことによって観客側に一種の緊張感(構え)が生まれることは映画を見せる手段としてはかなり効果的なのかも。


チャールズとパーチャーには彼の「認められたい」「味方として背中を押してほしい」という願望が表れています。

「(映画の中で彼らが象徴しているのは、)誘惑的で危険で邪悪な力。結局、彼を壊そうとする。」「ナッシュに才能を確認させ、自分の価値を教え、その手法は才能の反映であり正当だと確認させた」(監督のコメンタリーより)

追われる緊張感、死への恐怖もまた、彼自身が「生み出したもの」(大げさに言えば求めていた刺激とか、生・感情の実感とか?)であると言えるんじゃないかなって。精神分析とかフロイトさんの話はここらへんがおもしろいよね。極端に言えば「トラブルメイカー」は、トラブルを「起こし続けている」ことによって自身のアイデンティティを保っているのかもしれない。私たちは自分の欠点を「治す」ではなく「受け入れること」によって心の平安を得ていく。物質は0と1で存在しているのに、人生や精神を「正」と「誤り」の二項対立で語ることは幼稚だと片付けられてしまう(もちろんそうなんだけど)。この世の中は(それこそ神様がつくったんじゃないかと思うほどに)非常に合理的に作られているように見えて、あらゆる物事が矛盾しているっていうのも(総論賛成、各論反対的な部分かも)面白い話。


話はそれるけど個人的に思うのは、悩むことや考える事の重要性はその時に発揮されるのではなく、後になっての行動に影響していくんじゃないかなということ。すぐに結果を出すべきことと、後々への投資の2つを並行して考え実践していけたら強いんだろうなって思う。まさにsaying is easy but doing is...