Bi-Bo-6

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日常のあれこれ

人がいないということ。山陰地方がおしえてくれること。

皆生温泉から足立美術館出雲大社松江しんじ湖温泉鳥取砂丘と回ってきました。
山陰地方っていうと関東からは離れているし、機会がないとなかなか行けないところ。
一言で旅をまとめると「場末感がなくて、比較的きれいだった」ことと、「人がいない」ということ。備忘録みたいなものを書きます。
(行った期間が8/1の週でお盆じゃないっていうのもあるけど、素の街の雰囲気を見てきたよ、ってことでよろしくおねがいします。)


鳥取市内はアーケードも道路や歩道がすごく綺麗で、県庁舎もリニューアルの工事をしてるほど。でも市内を歩いてみると驚くほど人がいない。部活っぽい高校生はちらほらいる。それだけ。お年寄りすらいない。駅前にはスーパーもない。大丸の地下にはちらほらおばさまがいた。人がいない街の道路の舗装がやたらと現代的って、ちょっとした異常を感じるというか…改めて「公共事業」や「公共サービス」って単語の意味を考えさせられる良い機会になりました。
つくった道路を掘り起こしてまた埋めるの繰り返しをしてれば、お金は動くからね。(よく土を掘る→埋めるを繰り返してると精神が死ぬって言われてるけど、道路舗装の工事も名実ともに似たようなもので、そこで計上された金額っていうのはすでに死んでるお金なんじゃないかと思うよ)。その非生産性にぞっとする。一方では公共サービスっていう名のもとに「100円バス」だったり公民館のサービス、博物館の安い入館料なんかが維持されていて、これはソフト面だし比較的私たちが「必要。なくなったら困る」と感じやすくて主張しやすいもの。で、この金額を維持するためには財源が必要で、そのためにも上記の道路工事を行う…と、ひどい自転車操業っぷりだなあと思ったりします。栄枯衰勢という言葉があるけれど鳥取市内の「静かで落ち着いた雰囲気」こそが「過疎」なのである、という苦々しい現実。結局は「維持でせいいっぱい」なのかもしれない。
##東急グループいわく、「東急沿線の人口は25年まで増加し続ける」ということらしいけど、この予測がどれほど大きいのか、重大な価値があるのかを改めて実感する。


ただこれと似たようなことは、観光都市として本当に完成度が高いであろう松江市宍道湖畔・松江城下町にもいえてそれが今回の旅ですごく心に刺さった事実のような気がする。松江は国際観光都市って銘打っているように、街並みやアトラクション(堀川の遊覧船や、開府400年祭の舞姫隊なんかまで)日本の観光地のなかでは指折りなんじゃないかっていうくらい「古き良き江戸時代」を見せてくれる場所なのに、女性向けのPRも万全なのに、あまりにも人がいない。どんな感じかっていうと鎌倉って鶴岡八幡宮を超えると一気に住宅街になるでしょ。それがずっと続いてる感じ。環境はすごくいい。鎌倉の住宅街にあるような現代日本文化のクールさがあって、でもでも程よく庶民的でもある(鎌倉みたいにすぐ山があるんじゃなくて、松江の土地は比較的平坦だから、っていうのも起因してる気がする)。すごく過ごしやすいだろうっていう土地だし、観光資源も豊富でモデルコースがいくつもあるし、リピーターがたくさんいてもおかしくないくらいなのに。人がいない。宍道湖の白潟公演〜島根県立美術館あたりとか夕日のスポットとしてはもちろんだし、市民の憩いの場として全然機能しそうなのに。(1km歩いてすれ違うのは3人くらい)。
市内はきれいだし景色も良くてご飯もおいしくて、街並みのネーミングにもかわいらしいものがおおくて(カラコロ工房とか)きっと女性受けすると思う。土日は賑わってるといいな。
こういうのを踏まえて、広告会社の人は「ここに広告出してみよう」とか「この検索キーワードに連動させてみたい」とかってやるのかなあ。そういえば私自身日常で「広告」に触れる機会といえば、駅かネットくらいな気がする。駅に貼り出してある観光地のポスターはJRとJekiが管理してるんだろうって考えると、新幹線のない山陰はキャンペーンをうつには多少不利なのかも。話は変わるけどANAのPRキャンペーンに関するネットへの出稿規模は尊敬に値する。サイトのデザインとかちょっとユニクロに近いセンス(統一感)を感じるよね。
そんな「デザインいいなー!」って感じるエッセンスは案外鳥取にも島根の街中にも存在していて、それはフリペの数々です。センスあるフリペって、街の元気度(主に若者)のバロメーターになる気がします。人口が少ないだなんていうけど、質の良いフリペの発行数は多いし、いずれも根底には「町おこししたい」っていう良いストレスがあるみたい。いいなって思いました。




同じく人がいない光景っていうのは今年のGWに秋田・青森と旅させてもらったときにも見てきたんだけど、どっちかというと人口最小の島根鳥取組より、東北組の「過疎」の方には場末感があった。子どもは見かけなかったし、全体的に昭和という時代に囚われているオーラが出てた。それで青森の弘前にも寄ったんだけど、街の活気がすごい。なんでかっていうと、その時は「大学がある」っていうのがキーポイントなんじゃないかなって思った。流動性があって一定の年齢の人が集団になりえる、という役目が(教育・研究機関とは別に)大学にはある。その場で詳しい話を聞いたNPO(harappa)の活動なんかも大学生は興味を持ちやすいだろうからやりやすいとも思う。


あと特に思ったのは箱物多すぎ!ってこと。1日に何人くるかもわからないのにあちこちに変な美術館とか博物館とか建てすぎなの。管理だってお金と人間が必要だし、そんな1日数人しか来ないところに座ってクーラーかけて戸締りして、館内にはほこりがたまっていって少しずつ建物は劣化していって…って本気で不毛だと思う。建設するときの経済効果とか建築家の仕事になるとかいろいろ事情はわかるけど、地図の横にずらっとならんだ「これ誰が行くの?」っていう「観光資源」の飽和状態に呆れる。客が存在しないのだから、取り合いにすらなってない。誰が行くの?


そういう地方の実情を知ることで東京のこともまたよく見える。密度の濃さは言わずもがなだけど、「イベントと人の流動性」の重要性に気がついたり、一方では箱物を持て余してる予感がしたり。別にそんな勉強をしに山陰に行ったわけじゃないんだけど、思いの外いろいろと感じることが多くて、ただのリフレッシュにとどまらない、よい旅行になったんじゃないかなと思います。



あとはさっくり降り立った街々について

皆生温泉

鳥取県米子市、県の西側なのでほぼ鳥取県です。米子市ってなんで名前聞いたことあるんだろうって思ったけど、境港は「ゲゲゲの鬼太郎」で有名ですね。空港の愛称が「米子鬼太郎空港」だったりする程度には力を入れている様子。皆生温泉はいままでに行った温泉とはちょっと空気がちがっていて、「ローカルできれいめ」な温泉なの。おみやげ屋さんとか、いかにもな観光地というよりは、山陰の人々が海沿いを求めてやってくる風な感じがした。水もきれいで、人工的な簡易ビーチだけど、結構泳いでる人もいました。きれいめはどういう意味かっていうと、ホテル郡がわりと新しい。(華水亭とか汐の湯が目を引く)潮風公園も今年の春にできたばっかりだというし、道も整備されてほどない感じがします。やっぱり鬼太郎のブームに伴ってつくりなおされたのかな…。
##きれいな建物や建造物は価値があって当然だけど、その価値はだんだんと下がっていく。これは温泉街に限った話ではないしどんな建物にも共通して言えることだけど、やっぱりスクラップアンドビルドを繰り返していくしかないのだろうか。目に見える劣化(「あー昭和っぽいなあここ」もしくは「あーバブルの残骸って感じ」という、嗅覚に訴えかける要素)とどうたたかっていくかとか、他の宿泊施設との差別化とか、探ってみるのもおもしろそう。

足立美術館

枯山水庭園が世界的にも有名だという美術館です。足立さんっていう偉い人のコレクションを延々と見せられるわけだけど、とにかく庭園の美しさは本物みたいです。私もそこまで日本庭園とか石の配置とかそういうものに詳しくないんだけど、「目線を動かすたびに庭園の表情が変わる」って現象に立ちあってびっくりしました。だって3歩あるくともう全然違う景色になるんだよ!

あとね、一カ所、私が見とれちゃうポイントを見つけて。手前に植えてある木から借景としてある奥の奥の滝までの距離感というか、立体感がすごい。

あと印象的だったのは北大路魯山人のつくった焼き物。焼き物だけでぶっとんでる芸術品って世の中にたくさんあるとおもうけど、魯山人のって「料理をのせた姿を見たくなる」っていう意味で特異だと思うし、それこそ(料理を引き立ててこそ)焼き物の真骨頂だと思います。

出雲大社

なんか勝手に抱いてたイメージとはちがって(あのピラミッドみたいにやたら階段が長いやつ想像してた)ちゃんとしたふつうの神社でした。人がちらほらいました。観光バスがくるときは参道も人でいっぱいに賑わうんじゃないかなって思うけれど。あと、表参道が熱烈道路工事してる…。松江市内よりも商魂のたくましさを感じた。一畑電車みたいなローカル路線は人生で数回目に乗れたので、楽しかったです。

鳥取砂丘

鳥取市内には人がいないけど、砂丘には結構います。車で来るんですね。砂丘はさりげなく今回の旅行の本命だったんだけど、期待を裏切らなかったです。真夏の晴れた昼過ぎに、1時間ひたすら砂の中に素足を埋める体験なんて、とても他ではできないと思うので、ぜひおすすめです。アルジャジーラとか見るときに「あんな感じね」って結構身近に感じることができそうです。乗らなかったけどらくだは1人あたり\1800です。